本当の友人

 
 
 
昨日は10数年ぶりに会った友人と飲みに行った。
 
彼はガンを宣告され、死ぬはずのところを助かった話をしてくれた。
国立がんセンターでもう手遅れだと言われた。
治る見込みはないが、とっても高価な抗がん剤を特別打ってあげると勧められたという。
でも、彼は断った。自分で治そうと思ったのだという。
それから、自分の好きなことだけをやった。
朝5時に起き、毎日20Km歩き、登山をし、特別な水を飲んだ。
肉も魚もパンも食べるのをやめた。
本当は死ぬはずだったが、徐々に良くなって、4年で奇跡的に回復した。
今ではまったくガンが消えてしまった。そして、再発もしていないという。
 
死ぬような思いをして、考え方が全く変わったと話してくれた。
なにが本当に大切なものなのか、死を宣告されて、頭が真っ白になって初めて気付いたという。
 
彼はピアノの天才だ。
 
今後は、ピアノだけに生きていきたいと話してくれた。
でも、もちろん、霞を喰って生きて行く訳にいかない。
だから、仕事をして帰ってきて、夜中にエレピをヘッドホンで弾いているという。
 
今度スタジオに入って、一緒に演奏しようということになった。
 
彼はラフマニノフが好きらしい。
リストの超絶技巧も、最近挑戦してるらしい。
年をとっても、どんどん技術が上がっていく。
限界なんてないと話してくれた。
 
僕はバッハが好きだから、
一緒にバッハをやろうと言った。
インベンションを彼がピアノで弾き、
僕がドラムを叩く。
 
それから、中学の友人が壮絶な死に方をしたことを教えてくれた。
その友人は、僕の大の親友だった。
とっても変わった奴だったが、なぜか気が合って
毎日毎日、彼と深夜まで遊んでいた。
もちろん、不良だった。
ゲームセンターに行って、ケンカしていた。
 
彼はその後、とってもヤバい仕事をしていたようだ。
精神もおかしくなっていたのだろう。
ホテルでシンナー漬けになって、首を括って死んだらしい。
 
お前、その話を聞いてなんとも思わないのか? と言われたが、
僕は、あいつにふさわしい死に方だと思うと言った。
友人は、俺はとてもショックで悲しいのに、やっぱりお前は変わってるなと言われた。
 
人の人生なんて、悲しいに決まっている。
そして、彼に残された道は、死しかなかったのだろう。
生きていたとき、彼と一緒に笑ったこと。
殴り合ったこと。
もっと笑い合えばよかった。
 
いや、奴とはいつもゲラゲラ腹を抱えて笑っていた。
とってもつまらないことで・・・
そんなことが、なぜか思い出されてくる。
 
ピアノの天才とも親友だ。
 
生死の一線を超えて、彼は変わった。
 
「お前をアーティストだって認めてやるよ」
と、僕は彼に言った。
 
大切なアーティスト仲間がまた一人出来たわけだ。
彼も宇宙人だ。
「お前も宇宙人だろ?」と言うと、
奴は頭を抱えて、本気で驚いていた。
「なんで、そんなことがわかるんだ!?」って・・・
ハハハ、俺にはわかるのだ。