神は日本を憎んでる?

 
 
 ダグラス・クープランドの『神は日本を憎んでる』(だったけかな)を読んだ。(手元に本がないもんで・・・)
 
 地下鉄サリン事件当時の日本を舞台に、カナダ人が書いたカルト小説。
 まあまあ面白かった。(なんて言うと、クープに失礼かな?)
 でもなんの面識もないから別に関係ないだろう。
 酷評しようが、罵倒しようが・・世代が似ていることを別にすればなんの共通点もないのだから。彼とは。
 彼はカルトに興味があるらしいが、僕はカルトに所属していた。
 彼は外から客観的興味を抱いていたのかもしれいが(小説を書くために?)、
 僕は内から主観的にコミットしていた。
 彼は日本に住んで編集の仕事をしていたというから、日本のことをよくご存じだ。(外側から? 内側から?)
 埼玉や携帯や日本におけるカルト教団の事情にも詳しい。
 もともとは、美大に通っていたようだ。(美術が好きなのは僕に似ていなくもない)
 
 小説の主人公は団塊ジュニア世代だ。
 なんにもなかった80年代。バブル景気でなんでも手に入るが、これといって熱狂するものもない時代。
 否、熱狂するものが初めてなくなってしまった時代。
 埼玉出身の、大学は卒業したがなにもこれといってやることのないフリーターがカナダに行く。
 物価は安いしドラッグはやり放題だから。(だそうだ)
 それに、モルモ・教の宣教師にだまされた同級生の女の子がカナダに行ったから?
 そんなに深い訳もなく、日本から抜け出す。
 日本が嫌いだから。
 そして・・ところが・・
 
 たぶん、英語圏で書かれた小説でサリン事件のことが書いてある、そして日本のフリーターの実態がよく書けているから興味深いのだろう。
 でも、僕には今一かな。
 
 確かに日本にはなにもない。携帯ショップとお笑いとコンビニしか・・。
 だから神に憎まれる?
 でも、その”神”って、どの神?
 モンモル教のイスキリ?
 それとも黒帽子派のシーババ? シャックリ?
 それとも古武士新道の八百十一万の神々?
 それとも万世一系のあらん人神?
 
 たぶん、日本は天理、黒住、大本の神に憎まれている。(日本人が無視するから)
 そして、エホバ、アッラー、キリストに無視されている。(日本人が恐れないから)
 なぜなら、全ては無常だから。
 その割に、儒教の倫理を形ばかりに採用している。
 だから、この社会はつまらない。予定調和。
 
 だから若者が逃げる。
 危険な害国に行って、禁じられた遊びをしたいと思う。
 
 スポーツ、セックス、スクリーンならぬ、ドラッグ、セックス、円高差益
 
 そして、最高の快楽的冒険を満喫できるのは、カルト入信以外にないということ。
 
 つまり、カルトの神は日本を憎んでいるどころか、溺愛している。
 
 そして、やはり、とどのつまりが破壊が起きる。
 
 カルトは既存の社会を破壊せずにはいられない。
 
 もし、この小説が、日本発の世界破壊小説だったとしたら、
 僕は面白いと評価しただろうが、
 やっぱり、小さな日本製テロリスト・カルトを外からジョークっぽく描いただけだから、
 まあよく書けてるね、文章上手いね、日本をよく勉強してますね、と言うくらいしかできない。
 つまり、はっきり言って、あまり面白くなかった。
 (クープには悪いけど・・)