ビル倒壊の夢と伝染病者搬送

 
新宿の高層ビルが地震で倒れる夢を見た。
 
僕は、地震の起きる前に新宿にいて
地震でビルが倒れるのを見ていた。
スローモーションのようにビルはゆっくり横倒しになり、
倒れた衝撃で、ガラスが粉々になるようにビルは壊れた。
埃が舞い上がり、辺り一面が薄暗くなった。
ビルが倒れてからが、倒れるときよりも大変になった。
倒れたビルのせいで、交通が遮断してしてしまったのだ。
だんだんと大騒ぎになり、人々が恐怖と不安でパニックになった。
僕もどうしようかと心配になった。
 
M9以上の地震が近々起きると噂されているからそんな夢を見たのだろうか。
 
先日は、伝染病に罹ったお兄さんを病院に搬送した。
ネットカフェに何カ月も泊まり込んでいたお兄さん。
仕事も見つからなくて大変だと世間では同情を買うだろう。
でも、実態はそうでもないのだ。
高校を中退して、覚せい剤をやったりして、
もうすぐ40だというのに、
求職活動もほとんどしていないようなお兄さんなのだ。
人を信用できず、職がないのも、伝染病になったのも、人のせい。
先生が直してくれないから、こんなことになった。殴りたくなる。
ふざけんじゃない。ろくな奴がいない。と文句を言う。
誰も信用しない。神経質で自分勝手なお兄さん。
だいぶ痩せこけて、伝染病の看護人付きの搬送者で搬送される間、
僕に文句ばかり言っていた。世の中を呪っているのだろう。
誰もなにもやってくれないと言っていた。
でも、普通の社会人なら、(否、社会人でなくても・・)
病気になれば自分で病院に行き、入院する時だって自分一人で行くだろう。
だれも家族とか友達がいなければ・・・。
でも、このお兄さんは、自分ではなにもできないので、
行政の人が搬送車を手配し、
付き添いの女性の看護人までつけて、入院に同行し、
(もちろん病院も自分で探したのではなく、紹介してあげたのだ。)
そして、入院の手続きまでしてあげるという、至れり尽くせりの待遇。
それもこれも、仕事がなく、お金がなく、自分ではなにもできないから。
でも、仕事がないのではなく、仕事をしないのであり、
仕事をしないから、お金がないのであり、
お金がなくて、一日中、日中は部屋に籠っているから病気になるのであって、
それを社会のせい、他人のせいにしても始まらない。
知的障害者でもないのに、そのように社会に適応できない若者が大勢いて、
税金も払わないどころか、税金で運用されている福祉制度を利用しているにもかかわらず、
それでも行政に文句ばかり言っている若者が大勢いる。
そのような若者の実態は、一般の人にはあまり知られていないから、
NPOなどの支援団体、地元の政治家などが窓口になって、福祉に紹介されてくる場合があるのだが、
仕事のない若者を憐れみ、一時、年越し派遣村とかが話題になったが、
一般の人は、そのような若者を気の毒に思い、政治や行政は何やってんだと思うかもしれないが、
行政に頼らなければ、何の仕事もできないような若者の実態を知れば、
少しは考えも変わってくるに違いない。
彼らの中には、覚せい剤中毒がいたり、どうしようもない怠け者がいたり、
制度を悪用して楽をしようという恥も外聞もない者がいたりして、
仕事をするのはバカらしいと言って、まったく求職活動もせず、一日中、なにもしないで引きこもってはいるが、
制度だけはとことん利用しようとして情報を集めるため、真昼間から図書館で法律まで勉強して、互いに情報交換をしたりしている。
そういう奴らを、失業保険以上の待遇で保護している。
奴らはバカではなく、いざというときは、支援団体や政治家や、時にはマスコミを利用したりする。
そこまでして、働きたくなくて、ぶらぶらしたいのか理解に苦しむが、
一日2時間でもいいからバイトでもしてくれと言ってもなにもしない。
病気だから、働けないと言って、病院に通い、
身体の病気がなくなると、今度は精神病院に通い始め、
だんだん、薬を処方されるうちに、本当の精神病になる。
そうなると、今度は精神障害者の申請をして、障害者手当を申請する。
弱者を救済するために制度があるのだが、逆に制度を利用せんがために、自分がどんどん弱者になり、
制度で決めた弱者の定義(それは障害者であったり、傷病者であったり)に、自分がだんだんなっていく。
ミイラ取りがミイラになるという表現が正しいかどうかわからないが、
やる気を起こしてなにかやれば、なんでもできるはずの若者が、
制度に甘え、社会に甘え、人のせいにして、どんどん非人間的になっていく。
 
入院は隔離病棟なのを知っていて、
「なんでバイ菌扱いされなきゃならねえんだよ」と文句を言っているお兄さんを見ていると、
僕だったら、隔離病棟だろうとなんだろうと、
一人静かになにもしないでいられる期間が持てるのだったら、
それこそ神が与えてくれた大切な時間だと思って、
本を読んだり、スケッチブックに絵を描いたり、
なんでもできるだろうにと思って、彼に、
「本は持ってきた?」
と訊くと、彼は、首を横に振った。
 
すべてにおいて、ネガティブ・シンキングだから、
当然、本など持ってきていないだろうとは思っていた。
なんで俺が病気して入院しなけりゃならねーんだよ。
という発想だから、
逆にどんどん悪くなるし、
なんで、この俺にまともな仕事がねーんだよ。
という発想だから、
逆にいい仕事には巡り会えない。
 
彼を見ながら、つくづく、自分の運命は自分で決めているのだということが分かったが、
本人にはそれがまったくわからないのだということも
そして、教えてあげたくても、本人が気付かなければ、誰が話しても理解しない、理解できないだろうことも、
つくづく感じられて、せめてもこんな言葉しか掛けられなかった。
 
「入院中、あんまり切れるなよ」
 
彼は、何言ってんだこいつ、という目で僕を睨み返していた。