本当の義務

 
 もう5時だから日が明ける。
 
 ほんとうだったら輝かしいおめでたい一日の始まり
 ところがぼくはさっき眠り薬を飲んだばかり
 眠れないから飲んだのに眠れない
 そして夜が明けるなんて
 なんて皮肉なんだろう
 太陽が周回遅れのぼくを追い越していく
 
 それでも明日は休みだから
 こうして鼻水を垂らしてエアコンの掛けて
 寒さに震えて
 ベッドの上に座って起きていられる
 
 覚醒はしていないが
 
 もうすぐ睡魔に引きづり込まれ
 脳の機能が低下して
 
 何を考えているのかも定かでなくなって
 それでも支離滅裂な様々な思考と映像が生産され
 それとは別に、こうして文字も書いている
 
 
 そんなことができるなんて不思議なのだが、
 ところが言語にどれほど客観的に記述できる能力があるのかは疑問だ
 
 つまり、ぼくはさっきまで、温泉に入って夕陽を眺めているイメージを思い出していてたのだが、
 それとは全然別の言葉を綴っていた。
 耳からは全然違う音楽が流れている。
 
 伊豆のなんかの観光客向けの博物館か植物園か
 洋ランの植物園に行ったことを思い出した。
 
 岬の突端の高い崖の上の道路から下ったところにあるガラスの温室
 
 そこがどうしたわけでもない
 ただ思い出しただけだ
 
 でもそこはメンドシーノの海の近くに不思議に似ている
 
 だからもう一度いきたくなった
 
 こんどは少し自分を鍛えているから
 
 磁力で自分の行き先が見つかるかもしれない
 
 地図にも描いていない行き先
 
 そこに行けることがぼくの義務であり、義務を果たすことがなにより達成感のある仕事なのだ。
 
 してみると、ぼくの使命とは本当の自分自身に課せられた義務を捜すことであり、それをはたすことだ。 

 言うには易いが、もう見えている