車がエンスト、いろいろ交換

 
日曜日は、母に飯を食わせて散歩させる日だ。

この前の日曜日も、やらなければならないことは同じだが、いつもと違っていた。
向かったのは中野セントラルパークだった。その近くの駐車場に車を止めようと、入口のチケットを取るために停車したら、そのままエンストした。
何度キーを回してもセルが空回りするだけでエンジンがかからない。
よくあるホラー映画の一シーンそのもの。
後ろから殺人鬼が追いかけてくる、子供を連れて庭に出て、急いで車に乗り込む。
キーを回すがエンジンがかからない。怒って車のハンドルをガンガン叩く。
後ろからチェーンソウを持った目だし帽を被ったサイコが追いかけてくる。
間一髪のタイミングでエンジンがかかり、全速力でタイヤを鳴らして暴走を始める。
実際問題、駐車場の入り口でエンストしてしまった僕の車は、何度やってもエンジンがかからないので、これは、バッテリーがとうとう上がったなと思った。
後ろから駐車場に入ってくる車がいなかったのが、不幸中の幸いだった。
認知症の母には、なんでもないから安心せよと言い、
(この日は猛暑日だった。昼飯を食わせに車で出かけたのだが、バッテリーが上がりそうなのを予感していたから、クーラーもかけず、窓を開けて走っていた。)
もう自分はお手上げで、携帯でJAFを検索して呼ぶしかないと思って車から出た。
猛暑の直射日光が容赦なく燦々と僕の頭に降り注いで、着ていたシャツは汗だくになった。
でも、考えてみればそんなことやっている暇もないのだ。
財布に金が千円しかない。だからとりあえず、ATMに言って金を下ろそうとして、中野セントラルパークに来て、この駐車場に停めたのだ。
それなのに途中でエンスト、絶望的状況。
しかたなく、もう一度車の中に戻り、キーを回した。
奇跡的にエンジンがかかった。
駐車場の一番奥のスペースに車を停めた。
これで、一安心。
もし、もう二度とエンジンが掛らなかったとしても、ここに停めておけば、他の車に迷惑をかけることなく、レッカーでもなんでも呼べるだろう。
直射日光がフロントガラスに叩きつけるロケーションだったが、とりあえず、呆けて何もわからない母と車を降りて、近くのマックに入った。日曜日なので、家族連れや、若い学生の男女などで混雑してい中、とりあえず、母にはウーロン茶、そして自分用にコーラ、それから、ポテトを一つ頼んで、唯一空いていたカウンターの席に座った。
「今から、ちょっと行く所があるから、ここにいてよ。ここを絶対離れないでよ。必ず戻ってくるから」と母に言い聞かせて、母にポテトと飲み物を渡した。詳しいことは話さない。どうせ理解できないし、まったく奇想天外なことを想像して、おかしな行動に出られるとかえって面倒なことになるから。
マックの中は冷房が効いているから、この中で待たせている分には安全だ。
僕は、炎天下、とりあえず銀行に走った。その道すがら、携帯で行きつけのGSに電話して、バッテリーの在庫があるか確認した。でも、実物を確認しないと、あるとは確約できないというので、とりあえず後でそちらに行くと答えた。それからATMで金をいくばくか降ろして、またマックに戻った。
「このジャガイモおいしいね」と母がほとんどマック・フライド・ポテトを全部食べていて、「このお酒おいしいね」と言ってコーラを飲んでいた。
認知症の外に、かなり重症の糖尿病だから、ウーロン茶を与えたのだが、僕が飲むはずのコーラをすっかり飲んでしまっていた。
でも、まあ、それくらいたいしたことでもない。
僕が睡眠薬を大量に飲んでアルコールを飲んだりしたことに比べれば・・
それから、同じビルの二階のテナントに入っている、うどん屋に連れて行ってとりあえずうどんを食べさせた。
これから、どうしようか、頭の中で考えていた。
母を家に送って、一人でGSに行くのが一番いいが、そうすると、母の家で車を停めたのが最後で、エンジンがかからず、GSまで行けないかもしれない。
うどん屋から出て、母を連れて歩いて駐車場まで行くと、すっかり直射日光に照らされて車はフライパンのように熱くなっていた。
とりあえず車のドアを全部開けて、中に風を入れた。
「まだ中に入らないでね」と母に言うと、言うとおりにして外のガードレールに持たれて立っていた。
どうしようか? エンジンはすんなりかかってくれるだろうか?
しばらく車内を冷やした後、母を車中に入れ、ドアを閉め、窓を全開にして、キーを差し込み、キーを捻った。
一回でエンジンがかかった。
料金所で一時停止したときもエンストしなかった。
そのまま、GSに向かって走った。
まず、ガソリンをセルフで入れてから、係員を呼んだ。
「さっき、電話した者ですが、バッテリー見てもらえますか?」
ガソリンを入れている間に、係員はボンネットを開け、計器を持ってきて、バッテリーの残量を計った。
「あまりよくないですね」
「エンストするんですよ」
「それはバッテリーのせいかもしれないですね」
実物のバッテリーの大きさを計り、合うのがあると言うので交換してもらうことにした。
母を車から出し、ガソリンスタンドの休憩所のような所の椅子に座らせた。
ここはクーラーが効いていて涼しい。外にいたら10分で熱中症になってしまうくらいの猛暑だ。
しばらくして係員が入って来て、ハンドルのステアリングのオイルがこんなに汚れていると現物を持ってきて僕に見せた。
粘性がなくなって泡立っているとのこと。じゃあ換えてくれと言った。
その後、しばらくして、また係員が実際の点火プラグを一本持ってきて、
「エンジンがかからないのは、このせいかもしれません」と言って僕にプラグを見せた。
「かぶってるんですか?」と言うと、係員は頷いた。
ガソリンに浄化剤を入れるとプラグが綺麗になると言うので、それも入れてくれとたのんだ。
1本がいいか、2本がいいかと訊くので、どちらの方がいいのかと訊くと、2本の方がいいと言うので、じゃあ2本入れてくれと言った。
それから、プラグは取り寄せできるのかと訊くと、出来るということだったので、全部で4本取り寄せてもらうことにした。入手でき次第交換してもらうことにした。
そんなやり取りをしている間、呆けた母は、休憩所の椅子に大人しく座っていた。
バッテリー交換とハンドルのステアリングオイルの交換が出来たというので支払いをカードで済ませて車に乗った。
エンジンはスムースにかかった。
車がものすごく汚れていたので、自動洗車機で洗車することにした。
母を車の中に入れ、車を密封して、回転するブラシと洗剤や水が吹きつける中を通る。猛暑日だったから、車を密封してエンジンを切るとサウナのように熱くなった。
やっと洗車が終わり、母にここに乗っているように言い、僕は外に出て車を拭き上げた。
これで、一安心だ。
GSのバッテリーだから、そんなにいいもんじゃないかもしれないが、外車用のは、国産車の何倍もする。その国産車用のバッテリーも何種類かあったが、その箱には、「40000キロ保障!」と書いてあった。まあ、この夏、クーラーを点けて走っても大丈夫だったら、それで十分だ。
 
日曜日はそんなこんなで、ボロ車に翻弄された一日だった。
 
そして、実は、今日夕方、母を病院に連れて行ったのだが、また、車がエンストした。
でも、ガソリンスタンドから着信があったのだが、電話には出られなかった。
プラグが調達できたとの連絡かもしれなかったが、それどころではなく、やることがいっぱいあったのだ。
医者に連れて行き、帰りに薬局に行き、分包してもらうように頼む。分包する時間が掛るから、その間、母をファミレスに連れて行って夕飯を食わせた。そして、その帰りに薬局に行って薬を受け取り、月毎の弁当代を小料理屋に支払いに行く。それから、母を家に送り、眠れるように家の中の状況を整え、精神状態を安定させるように話しをしてから帰った。
そして、帰ってきて、家の駐車場に着いた途端にエンストした。
バックで自分の場所に入れようとしていた時だった。
また前回と同じように、何度キーを回しても、グルグル、キュルキュルいうだけでエンジンが掛らない。
諦めて、車を押すしかないかと思ったが、数回やって、やっとエンジンがかかった。
 
というわけで、今度車に乗る時は、GSにプラグを交換してもらうときに限ることにした。
まずそれを交換して、それでもエンストするようなら、もう、車屋に持っていくしかない。
今度こそ廃車になるかもしれない。
 
エンジンを交換しても、なんだかんだで、順調には走らない。
エンジンなんて交換しないで、廃車にして、新車を買えばよかったと後悔している。
それほどの経費を既につぎ込んでしまったのだ。
だから、できれば、この車に復活してほしいのだが・・
 
僕が何度もバーン・アウトして、それでも復活したように・・(?)
はたして、僕は復活しているのだろうか?
バーンナウトしたまま、バッテリーもプラグもエンジンも交換しないまま、
なんとか、脳をごまかす、脳内分子言語の濃度をだますようなことをやって、
まだこのボロ車を走らせている。
この車が逝ったら、保険金が入るようにしておいた方がいいと水風呂に浸かりながら思っていた。
後に残すものなど何もないし、
こんな車、下取りだって、もちろん誰もしてくれないだろう。
火葬場で焼かれて灰になってお終いだ。
もちろん、いかれてきたって、ヘルパーも介護施設も絶対使いたくない。
いわんや、老人ホームなんて真っ平御免だ。
自分で自爆するだけだ。
 
そう。今更、イスラームに改宗しようかとも思った。
いろいろな理由から・・。
(自爆もできるし・・・)
シャリーアの通りにすべてをゆだねるのだ。
でも、ラマダーンとか、戒律がたくさんあるから無理だとも思った。
僕は自分の欲望を制御できないから。
こんなことを書くと、テロリスト予備軍だと思われて
公安かなんかのチェックリストにアップされて、
目をつけられるのだろうか?
どこどこの広告会社だかなんだかの公安の子飼いの会社がそんな(ネットを監視する)ことをやっているのだろうか?
でも、僕は元警視総監か誰かの親族も知っている。
あのよくTVに出る、元公安のなんとかとかは、無能だったとその人はよく言っていたそうだ。
まあ、そんな話しはどうでもいいのだが、
国家が国民を監視し、暗殺リストを作るような国なんて、無くなってしまった方がいいことだけは確かだ。
 
何を書いていたのか、さっぱりわからなくなってしまったが、
 
とにかく、すべてのものには寿命があるということだ。
そして、それを少しでも延ばそうといろいろとあくせくしたりするが、
僕は自分の寿命を延ばしたいとは思わない。
ただ、今乗っている車の寿命は、出来れば延ばしたい。
あと十年は乗りたいと思っている。