抽象と具体

 
 
 
だらだらだらだら
 
風呂に入って
 
なにもすることもなく
 
なにもやる気もなく
 
 
外は晴れているのか曇っているのか雨が降っているのか
 
それすらわからない
 
  
やっぱりちょっと頭から抜け切れていない
 
たぶんクスリが
 
週末は外で飲むのを断って
 
ただ家に閉じこもって
 
自分を乾かしている
 
洗濯物を干すように
 
自分の身体、心を物干し竿に吊るしている
 
 
そうすれば少しは良くなるかもしれない
 
ん? なにが?
 
わからないけど、
 
すくなくとも
 
時間が経つのを少し遅くできるかもしれない
 
つまり、衰弱し、消耗し、老いて、枯れていく
 
非可逆的な時間のベクトル
 
それに逆らうには
 
ただじっとしているしかない
 
時間を止めるしかない
 
   
でも、
  
ベロの裏が荒れていて痛い
 
裏返して見ると傷になっている
 
歯のせいかもしれない
 
治療している歯がザラザラしていて
 
それでベロが傷ついたのかも
 
ずっと治らない
 
薬を塗っても唾で溶けてなくなってしまう
 
 
他にやることがないから
 
だらだら、だらだら
 
どうでもいいことを書こうと思った
 
そうして、こうして書いている
 
 
TVを見ると人が映っている
 
美しい人ばかり映っていたらいいのだが
 
醜い人がうるさく騒いだり
 
醜い顔をしたりしているのを見ると
 
嫌悪感が込み上げてくる
 
TVを消す
 
 
本を読むと
 
文章というのは
 
なにかを説明しようとしている
 
べつにどうでもいいことを説明しようとして
 
くだくだ言っている
 
それが煩わしいから
 
本を閉じる
 
 
音楽はいい
 
低音、高音、リズム
 
調和している
 
頭で考えなくてもいい
 
醜くもない
 
抽象的だ
 
時間の経過が必要だ
 
その分、時間がつぶせる
 
だらだらしている時間
 
 
だらだらしている
 
 
たとえば
 
ここにだれか現れたら
 
きっと驚くだろうな
 
僕はほぼ裸のようになっている
 
 
言葉はしゃべれる
 
言葉は抽象だ
 
でも肉体は具体的だ
 
だからこの具体をベッドに横たえ
 
できるだけ活動しないようにして
 
言葉だけを文字にして打ち込んでいる
 
それって、
 
この、
 
この文字たち
 
これって
 
なんの意味もない
 
なんの意味もないから
 
誰か読んでるの?
 
ここまで
 
ちゃんと読んでる人なんていないはず
 
だから
 
なんて言えばいいんだろう?
 
本当は具体を必要としている
 
そう言えばいい?
 
そうなんだよ 
 
本当は
 
このベッドの上で
 
あなたという具体を必要としている
 
そう
 
精神だけじゃなくて
 
目に見えて
 
触れて
 
重さがあって
 
熱がある物体
 
それって
 
大理石の彫刻のように美しくて
 
どんな芸術作品を見るよりも
 
感動する
 
 
でもそうできないから
 
ただ
 
だらだらしているだけ
 
 
明日はちょっと遅くまで寝てられるから
 
このまま
 
だらだら、だらだらしながら
 
時間を潰して
 
起きてることにしよう
 
たったひとりで
 
ここで