誕生日

 
 
そうだ。今日は誕生日。特になにもない一日。
だれも祝福もしてくれないし、呪いもしない。
ただ自分は両親に感謝するだけ。
 
風邪をひいて熱っぽい。
ネガティブな自分にはちょうどいい誕生日の過ごし方。
身体が熱くて、だるくて、苦しい。
この身体、を、この世に授かった日なのに、
”健康”っていう状態からは程遠いから、
精神もネガティブになる。
 
そもそも星から堕ちてきた男だから
この世は重力に縛り付けれた監獄
さらに熱があると
この殻を意識しないではいられない。
 
ずいぶんと無防備な鎧をまとって
外界を見、聞き、味わい、嗅ぎ、感じている。
 
地球はそんなに美しい星ではなくなってきた。
人間が溢れ、都市はどんどん醜くなっていく。
五感が麻痺しなければ
精神が吐き気を覚える。
 
唯一、目を閉じ、耳をふさぎ、暗黒の中で
自分の生まれてきた闇を見つめるとき、
そこに本来あったはずの理想が
おぼろげに見えてくる。
でもそれを表現するには
この肉体が必要だ。
言葉が、色が、音が必要だ。
荒い波長に変換されると
インスピレーションは陳腐なものとなる。
みんなそれを素通りする。
でも立ち止まってくれる人もいる。
 
そんなたった数人の人たちのためにも
僕は、書かなければならない、
描かなければならない。
 
区切られたこの時間と
物質であるこの両手と
脳であるこの頭を使って・・・