なにも生産しない “金余り”

最近、楽天の動向が話題になっている。
同様に、ホリエモン村上ファンドの動向も、ご存知のとおりである。
 
世界に誇る日本のメガバンクは金余りの状態らしい。
しかし、投資先は、どうやら、IT企業が最優先のようだ。
最近は、原油高のため、オイルマネーも有り余って
日本のファンドに投資先を求めているようだ。
 
かつてのIT“企業家”は、現在、“投機家” と化している。
有り余った金で株を買い、さらに資本を増強し、さらに金を生み出し・・・
銀行は、有り余った金をそのような“投機家”に我を競って貸し出し、
潰れそうな町工場や、弱小企業、名もないベンチャーには、目もくれない。
まさに、強い者がますますひとり勝ちする “弱肉強食”の “自由経済”だ。
 
ところで、何千億、何兆という金が投資され、企業を買収しても
なにも生産されないのは、ご存知のとおりである。
ただ、経営者が変わる、株主の名前が替わるだけ。
そして、上がった株を売り抜けたものだけが、濡れ手に泡で大金を手にする。
 
貨幣は、労働の対価のはずだった。
金本位制のときは、貨幣は金の量に相応していた。
しかし、現在はどうか?
資本家が、否、投機家が、大資本を右から左に動かすだけで、
大金を手にすることができる仕組みだ。
その金で、さらに資本を増強しなければ、
もっと大きな資本にM&Aされてしまう。
強い者が、さらに弱者を食い潰し、さらに大きく肥え太り、強くなっていく・・・
 
我々労働者階級が一生働いても得られない金を、
投機家は、一日の株の売買で手にする。
 
現在、経済はカジノ化し、1日2兆ドルもの資本が移動しているという。
  
しかし、それらの投資は、果たして何かを“生産”しただろうか?
  
投機家が、さらに大金を手にするだけではないのか?
  
慈善事業に投資しろとは言わない。
しかし、現在、世界の15億の人間が、貧困に苦しんでいるという。
国連は、2015年までに、その半分、すなわち7億5千万の貧困を解消させると宣言した。
しかし、果たして本当にそれができるのだろうか?
国連は、それだけの“予算”と“力”を持っているのだろうか?
現在、世界で1日1ドル以下で暮らしている人が、約12億人いるという。
(世界人口60億の5分の1が、1日1ドル以下)
そして、約8000万人が死ぬか生きるかの飢餓で苦しんでいるという。
 
さて、今回、TBSを買収しようという資金は、何千億かはわからないが、
仮に、8000億だとして、8000億÷8000万人=1万
1万÷100円=100日
すなわち、飢餓で死にそうな最下層の8000万人が、
少なくとも1日1ドルの最低限の生活を、100日はできる計算だ。
 
さらにこんな試算もある
(世界ゲーム研究所2001年http//www.worldgame.org/wwwproject)
世界が必要としているものにかかる費用

飢餓と栄養失調の撲滅  1兆9千億円
難民の救済         5千億円
地球温暖化の防止      7千億円
 
どのくらい信頼できる数字か判らないが、
すくなくとも、そんなに膨大な値段ではないことに、
逆に、ぼくは驚いたくらいだ。
 
国連にしても、どこの政府にしても、
現在は予算不足。
世界的な問題の解決に費やすことのできるマネーは
どこにも余っていない。
一方、投機家が慈善事業に大金を寄付するとは到底思えない。
しかし、現在、世界的に投機的な資金が有り余っているという。
なにか矛盾していないだろうか?
投機は、何も生産しないことは明らかだ。
 
今のIT企業家は、かつてはベンチャー企業家だったはずだ。
しかし、今やかつてのIT起業家の企業精神は失われ、
新しい事業を一から起こす気は、既にさらさらなくなったらしい。
投機で、既存の優良企業を買収することばかり考えているように見える。
 
もし、ベンチャーだというのなら、
本当に生産的で画期的な事業を 新たに“起業”していただきたい。
そのために、膨大な資本を使っていただきたい。
 
ナベツネに野球界の動向を聞きにいくのもいい。
日本の野球界の再編制も重要だろう。
しかし、ぼくだったら、東北大の西澤教授のところへ行き、
エネルギー技術についてのお話しを伺いに行くだろう。
もし、何千億、何兆の資本があったとしたらの話だが・・・
西澤先生は、光ケーブルの生みの親、画期的な節電装置SIサイリスタの発明者。
さらに、彼は送電線なしの電力技術が可能だと、語っていたのを覚えている。
衛星を打ち上げ、そこから地球に送電する・・・
というようなプランだったと記憶している。
 
もしそのような技術が可能だとすれば
それこそ、本当のエネルギー革命を起こせる。
現在、化石燃料原子力に頼っている世界のエネルギーは、
革命的に節電可能であり、しかも、送電線もいらないとしたら・・・
それこそ、ベンチャー企業家が何故、投資しないのか、不思議でたまらない。
 
勿論、オイルマネーのファンド投資家が、そんなプランに投資するはずはない。
銀行もだめだろう。
政府もだめだろう。
しかし、一介の起業家なら、資本力さえあれば可能だろう。
そして、グローバル経済が、本当にリベラルな“自由経済”だというのなら・・・
画期的省エネルギー起業に、誰も異を唱える理由は無いはずだ。
 
最新の技術で、エネルギー事業を起業すれば、
それこそ、その資本は、様々なものを生み出していく。
 
中国は経済改革が進み、エネルギーの需要が、現在進行形で圧倒的に増大している。
それは、領土問題、政治問題にも発展しかねない要素を含んでいる。
しかも、化石燃料をこれ以上消費して、CO2を排出し続ければ、
深刻な環境問題を引き起こしかねない。
京都議定書は、世界最大のエネルギー消費国であるアメリカが参加していないのは
ご存知のとおりである。)
省エネ、クリーンなエネルギーの需要は、
投機の対象ではなく、環境と我々の実際の生活の問題でもある。
 
日本は現在、アメリカなみのM&A社会になりつつあると言われるが、
なにも日本が、グローバル経済のニューワールドオーダーに支配され
その猿真似をする必要はない。
大金、大資本は、ただ金で金を産むだけのために“投機”するのではなく、
本当に“生産的”な事業に投資し、少しでも現在の社会を良くするために
使っていただきたいものだ。
そのためには、スマートで、しかもアヴァンギャルドな真の意味でのベンチャー“起業家”が登場し、世の中をもっと抜本的に変えることに、いい頭を使ってほしいと、最近、ぼくはしきりに思う、今日この頃である。