汚い人

 
今日は、とっても臭くて臭くてたまらない人の部屋に行った。
 
たばこのヤニ、そして、小便のにおい。
 
でも、その人はとてもいい人なのだ。
 
”いい人”と言ったところで何も伝わらない。
 
重傷の脳梗塞で突然倒れて、それから人生が180度、否、360度変ってしまった人。
 
それ以前と以後の写真があって見たのだが、ぜんぜん違う人の顔だ。
 
「俺は昔は切れ者だったんだ」と本人が言うように、以前は本当に切れる人だったに違いない。
 
それが、今では、小便にまみれて生活している。
 
ちょっと上がってお話したが、いるだけで匂いが身体中に染みついてしまった。
 
でも、お話は好きで、なかなか帰らせてくれない。
 
彼は、しょんべんまみれの万年床に寝ている。
 
立ち上がれず、その部屋から出ることができない。
 
それでも、生活していることが不思議だ。
 
訊くと、同じアパートの住人が助けてくれているのだと言う。
 
コンビニで食料を買ってきてくれるのだろうか。
 
以前に、何日も食べてないから、コーヒー牛乳とパンだけ買ってきてくれと電話があったことがあった。
 
それでも、煙草とビールだけは部屋にあるのが不思議だ。
 
いろいろな人がいる。
 
ほんとうに、信じられないような生活をしている人がいる。
 
人生、さまざまだ。
 
この寒いのに、窓を開けっ放しで、靴下もはかず、暖房もなにもない人もいる。
 
かなりおかしな人だが、
 
それでも、生きていることには変わりがない。
 
鼻水とよだれを垂らして、寒くて青い顔をしている。
 
部屋の中が匂うから窓を開けっ放しにしているのだと言う。
 
「ほうれん草の匂いで、バイ菌じゃありませんから!」
 
「ほうれん草の匂いで、バイ菌じゃないって!」
 
「ほうれん草の匂いで、バイ菌じゃないから!」
 
とりつかれたように、大声で叫んで繰り返していた。
 
それでも、魂はあるし、精神は病んでいるかもしれないが、
 
心の奥は純粋なのだ。
 
魂は病んでいない。
 
でも、魂が病んでいる人もいる。
 
普通の、金を稼いで、いい暮らしをしている人の中に・・・。
 
やくざまがいの商売をして、
 
脅したり、ゆすったりして、善人から金をむしりとっている低脳だ。
 
魂が腐り切っている。
 
そういう奴ほど、自覚がない。
 
腐っていることに気付かない。
 
そういう意味では、本当のバカなのだ。
 
精神を病んでいる人よりたちが悪い。
 
魂が腐っているのだ。
 
そういうのも、ゴロゴロいる。
 
本当に、この社会には、いろいろな人が蠢いて生きている。